火の使用について

火を使うことで、より美しく、ダイナミックで、スリリングな演技をすることができます。 しかしながら、ちょっとした不注意で大きな怪我や事故を引き起こす大変危険なものでもあります。

ジャグリングショップナランハでは、火をつけて使う道具をより安全に使用していただくために、火の使用に関する注意をまとめました。

なお、このページの注意事項を守れば火は安全だということは決してありません。 火の使用によって引き起こされる損害につきましては、ナランハでは責任を負いかねます。 すべてはお客様の責任において、細心の注意と万全の準備をもってご使用ください。

火の使用・・・基本五原則

火がどれほど危険かを改めて論ずる必要はないでしょう。 いったん燃え広がった火が人間にはどうしようもないことは、数々の惨事が物語っています。 しかしながら、その危険をより小さくするために最も重要な注意事項を5つピックアップいたしました。

1. 燃えるもののそばで練習しない

世の中のほとんどのものは燃えます。 また、燃料は往々にしてまわりに飛び散ります。 練習する場所に可燃物を置かないのは基本事項です。

2. 消火器等の準備

市販の消火器が最も手軽で確実な消火方法です。 個人でもホームページ等を通じて購入が可能ですので是非ご検討ください。

3. 髪の毛

人間は可燃物です。 特に髪の毛は道具が飛び交う場所にあたり、大変燃えやすいものです。 髪の毛が長い人はキャップをかぶる等の対策をとるようにしてください。

4. 衣服

服自体が燃えやすいのはもちろんのこと、飛び散った燃料が原因でより着火しやすくなる可能性があります。 手についた燃料などを服でふき取るのは絶対におさけください。

5. ライター

ライターは高温下で爆発します。 ライターをポケットに入れたまま練習をするのは大変危険です。 離れた場所に置くか、またはマッチをお使いください。

燃料について

ナランハは、様々な文献を参考にし、そして自ら実験を重ね、燃料に関しては最終的な結論に到っています。 答えは、「灯油」です。

今ほど情報の伝達が早くなかった時代、ジャグラーは色んな燃料を使って来ました。 ホワイトガソリン、ジッポーオイル、ランプオイル、コールマン燃料などなどです。 これらの液体燃料は、石油から作られます。原油を、コンビナートで温めて蒸発させ、蒸発した順番に取り出して種類わけをします。 すぐに蒸発する分を取り除き、次に蒸発するのが「ガソリン」、その次に灯油、その次が重油、そして最後に残るのがアスファルトです。

つまり、ガソリンは、すぐに蒸発します。 室温で放置すると、瞬く間にあたり一面に蒸発し、ほんの少しの火の気で爆発的に燃え広がります。 ジャグリングでは決して使ってはいけない燃料です。 ホワイトガソリンや、キャンプファイアー用の燃料(コールマン燃料等)、そしてライターのオイル等にも使われるベンジンなどもガソリンの一種です。 自動車に使うガソリンよりは引火性は弱いのですが、それでも着火の力は灯油に比べてもはるかに大きいものがあります。

一回火をつけた道具の火が消えた直後に、もう一回燃料に浸したときに、その火が完全に消えていたとしても、自然着火することがあります。 また、その時に容器に入れていた燃料そのものが着火する場合もあり、大変危険です。 冬場など、最初に火をつけるときは、灯油ではなかなか着火しないのですが、ホワイトガソリンやコールマン燃料などは、一瞬で火がつきます。 それはそれで便利なのですが、灯油に比べて火の持ちは悪く、半分くらいの時間で燃え尽きてしまいます。 また、ススの量も灯油とさほど変わりません。 火も大きすぎてちょっと使いずらく、また値段も灯油の数倍から数十倍します。

「ランプオイル」という燃料もホームセンターや東急ハンズなどで売っています。 インテリア用の小さな火を燃やすランプ等に使われます。 この「ランプオイル」の成分は、基本的に灯油と同じです。 灯油を更に精製してきれいにしただけのものです。 しかしながら、燃やした時のススが少ないかというと、そうでもありません。 ススは、燃料の良し悪しではなく、ウィック(燃料を浸す布)の具合による部分が大きいのです。 ウィックが真っ黒コゲになっている状態で燃やすと、ススの量が増えます。 ランプオイルは、なかなか手に入りにくいのと、値段も灯油に比べて20倍近くするのがデメリットです。

灯油は、燃料の中では、蒸発するのが遅い液体です。 他の燃料に比べ、ゆっくりと、そして長く燃えます。 それゆえ、他の燃料に比べると、比較的安全です。 また、ほとんどのガソリンスタンドでは量り売りをしてくれるので、入手もラクで、またお値段も1リットル50円前後と大変経済的です。 やはり、燃料には灯油をおすすめします。 もちろん、灯油を使えば安全と言う意味ではありません! 灯油でも、何でも、火を使ったジャグリングは大変危険です。

なお、灯油を含め、これらの液体燃料灯油には毒性があります。 灯油を飲んでしまったり、また蒸気を吸ってしまうと中毒症状が出ます。 灯油を飲むなんかありえないと思わないでください。 ポンプの調子が悪く口で吸った拍子に飲む事故なども発生しているようです。 小さなお子様のいる家庭なら良く分かると思いますが、子供が灯油ポンプをなめたり、灯油受けにたまった灯油を飲んでしまう可能性はゼロではありません。 また、ガレージなどの閉め切った場所で作業をしているうちに、灯油の蒸気を大量に吸い込む可能性もあります。 飲むと消化器系の粘膜がやられ、嘔吐、下痢等を起こします。 また、吸い込むとめまい、呼吸不全等を起こします。 灯油を誤って飲んでしまったときは、少量(幼児は1ml以上!)でもすみやかに医師の診察を受けてください。 吐かせてはいけません。 灯油に限らず、石油系の燃料は吐かせてはいけません。 吐かせようとするとき、誤って気管に入り、重い肺炎を起こす恐れがあります。 牛乳を飲ませてもいけません! そういう迷信が一部に存在するようですが、灯油は牛乳の脂肪分と反応して、かえって消化器での吸収をよくしてしまうそうです。

火吹きについて

口に含んだ燃料を、霧状に吐き出して炎に吹きかけると、すさまじい大きな火炎が口から吐き出され、ダイナミックな演出をすることができます。 また、パフォーマーの中には炎を直接食べるように口にくわえ、火を消す技をする方もいらっしゃいます。 これらは大変魅力的なパフォーマンスでもあり、ナランハでもお問い合わせをお受けすることがございますが、基本的にはこれらの技は大きな危険が伴うため、プロのパフォーマー等よほどの経験者でない限りお勧めしておりません。

私どもの知っている限りでも、実際に多くのパフォーマーが、吹いた火が風になびいて逆流し、また口の周りについた燃料に引火し、顔面に大火傷を負っています。 これらのリスクを十分承知の上ご自身の判断でなさることに関してはもちろん自由ですが、「火吹きや火飲みの方法を教えてください」というお問い合わせにはお答えしかねますのでご了承ください。

「すす」はなぜ発生するのか?

火をつけた時に発生する黒い煙「すす」は、不完全燃焼によって生ずる不純物が固体となって空中に発散するもので、様々な発生原因があります。

何重にも重ねた布に燃料を浸して燃料を燃やすジャグリング道具の場合、奥の方にある燃料がきれいに空気と触れ合わずに燃えることが大きな原因となることがあります。 つまり、芯(ウィック)がゆるくなったり、土やごみなどが内部に入り込んだ場合、そのわずかなすきまで燃料が不完全に燃えることですすがより多く発生します。 芯(ウィック)は、使うたびに少しずつですが緩んできます。何回も落下させると、形がゆがみ、隙間が発生して異物が入り込みやすくなります。 また、自分自身が発生させたすすが芯(ウィック)に大量に付着することも燃料が不完全燃焼する原因となります。 すすが大量に発生する場合は速やかに芯(ウィック)を交換し、また常にウィックをきつく、きれいに締めるように注意しましょう。

古い燃料や、酸化した燃料でもすすは発生します。 灯油は容易に酸化し、黄色く変色します。 古くなった灯油は使わないようにしましょう。 すすは見栄えも悪く、においを発生するだけでなく、人体にも有害で環境にも良くありません。 できるだけの対策を施していただきますようお願いいたします。

法律について

自分の不注意がもとで他人に迷惑をかけた場合は何かしらの責任をとる、これは法律で定められていなくとも自明の理ですが、様々な法律で火の使用は規制されています。

◇軽犯罪法 第1条 9項

左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。 相当の注意をしないで、建物、森林その他燃えるような物の附近で火をたき、又はガソリンその他引火し易い物の附近で火気を用いた者

【解説】実際に火事をおこさなくても、万全の体制と準備をせずに火を燃やせば、それだけで犯罪となります。 つまり、「火事の可能性がある行為」は罰せられるのです。

◇民法 第709条

故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス

◇失火ノ責任ニ関スル法律

民法第709条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス 但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

【解説】重大な過失で何かを燃やしてしまったときは、それを全額弁償する必要があります。 燃えるもののそばでファイアーの練習をするということは、 それだけで重大な過失であり、場合によっては民法の709条に基づいて莫大な請求を受けることになります。

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