2002年の出会い以来、バーツールナランハを育てて頂いた、日本フレアバーテンダーズ協会会長、キャットマンこと北條智之氏が、満を持しての独立されました。
本来であればオープニングレセプションに駆けつける所、もろもろ事情重なり、オープン3日後の11月1日にお伺いしました。

さすが北條氏、お店に入るなり、お花の多さに圧倒されます。私も、持参したお花を隙間に埋め込むようにお渡しします。
ところでネマニャというバーのお名前。つづりは「Nemanja」と、一見ナランハ Naranja と似ていて驚きます。
私も最初お伺いした時は驚きましたが、このお名前、セルビアのバイオリニストから頂いたそうです。
北條氏の奥様は、もともと銀座でバーテンダーをされていた方で、ご結婚後は一時期お休みされていたそうですが、今回の独立にあたり、夫婦でカウンターに立たれることになりました。
奥様はネマニャ氏の大ファンで、私も時々話を伺っておりましたが、その深さたるや私の想像と常識を超えるもので、まるで世田谷区民ホールに出かけるがごとく、ヨーロッパで開催のコンサートに駆けつけていらっしゃいます。
そんな訳で、もう最初からバーの名前は決まっていたようなものかもしれません。
お店に入ると、ネマニャ氏の凛々しい御姿の大きなポスター。店のBGMには彼の奏でるやさしいバイオリンの曲。
奥様は、ネマニャ氏の新作CDを入手のため出勤が遅れるというお話。ネマニャ氏の影響を感じました。
というわけで、開店直後、北條氏とサシで座ります。
本当に、長く、独立を模索されつつも、前店への愛着と恩、会長としての激忙から中々実現しなかった独立、いよいよ達成されて、本当に感激です。
色々なお話を伺いつつ、一杯目に頂いたのが「ジン・トニック・メルセデス」
何やら、じっくりと煮詰めて濃くしたトニックウォーターが出てきました。これにジンを加え、軽くシェイクした後、炭酸ガス注入マシーンで炭酸を埋め込み、抜けた炭酸を補います。最後に、手間暇かけて作ったというドライライムを飾り、できあがりました。この「愛情をかけた」「アイデアを尽くした」そして「最新の技術を使った」感じが、今はやりのミクソロジーの神髄でしょうか。名前のジン・トニック・メルセデスはスペイン語で「神の子のジントニック」という意味だそうで、私の舌ではありますが、この上なくおいしくいただきました。甘みも、香りも、とてもしっかりしていて、まさにショートカクテルのジン・トニックという風で、皆様もぜひ一度ご賞味いただければと思います。

そうこうしているうちに、奥様がご出勤し、二杯目に突入。二杯目は、バターを焦がし、レーズンバターの香りを楽しみつつ、実はさわやかなカクテルを味わうというこれまたアイデアとエンターテインメント性あふれる、それでいながら本当においしい、北條氏の日頃の研究を拝見しました。最後には奥様のカクテルも頂戴し、楽しい夜は更けていきました。
ネマニャ様のご発展を心より祈念しつつ。
